令和六年九州場所が始まった
11月10日日曜日より、令和六年大相撲九州場所がはじまった。
一年の収めとなるこの場所では、どんな展開が繰り広げられるのだろうか。
注目は新大関・大の里
やはり注目は今場所より大関に昇進した、二所ノ関部屋の大の里関。
スピード出世が過ぎて、まだ大銀杏が結えていない。
「ちょんまげ大関」は史上初とのこと。
九州場所での連日の取り組みを見ていても、早くも大関の貫禄溢れる素晴らしい相撲ばかりだ。
今場所も優勝なるか?
新十両・安青錦関にも注目
今場所から新十両として、素晴らしい関取が誕生した。
ウクライナ出身の20歳、安青錦(あおにしき)関だ。
令和五年の九州場所よりデビューし、序ノ口優勝、序二段優勝と重ね、初土俵からわずか八場所で関取昇進。
大の里関もだが、こちらもスピード出世甚だしい。
ウクライナ出身の関取は、雷部屋の獅司関に次ぐ二人目とのこと。
二人の故郷にとっても、少しでも明るいニュースが続けばと願う。
郷土力士の御嶽海関が好調
九州場所も五日目に入ったが、御嶽海関が五勝一敗と勝ち星を先行させている。
このところの本場所では負け越しが続いていたので、このまま行けば勝ち越せるか?
と期待している。
事実、相撲の内容も素晴らしい。
とくに四日目の翠富士関戦はテレビ画面に釘付けとなった。
終盤に翠富士関の右腕をしっかりと極めて、最後は極め出しで白星。
御嶽海関が極め出しって、珍しいのでは。
だがしかし、
「御嶽海はここからが危ないんだよな」
と巷でよく言われるように、序盤の内容が良くても後半で黒星を重ねてしまうことがよくある。
なんとか勝ち越しして一年を締めてもらいたい。
故郷から熱く応援しています。
しかし六日目…
この記事を書いていた途中の六日目金曜日。
御嶽海関は琴勝峰関に突き落としで何とか勝つものの、土俵下に転落した際に左肩と左腰を強打し救急車で運ばれてしまった。
これは休場やむなしかな…
好調だっただけに残念だが、とにかく心配です。
推しの若隆景関は
私の推しは荒汐部屋の若隆景関である。
三日目まで素晴らしい相撲で勝利を重ねるものの、四日目の琴櫻関、五日目の豊昇龍関の大関戦には二連敗している。
ここは大関陣の相撲が素晴らしかったとしか言いようがない。
しかし六日目の大の里戦。
大の里関の二度の叩きに落ちず、押し出して白星。
大の里関は呼び込んでしまったか。
先場所に続き若手の壁となった若隆景関。
千秋楽まで目が離せない。
どの力士も頑張って
一年収めの場所となる九州場所。
少し気が早いが、今年も数々の取り組みで楽しませていただいた。
どの力士も、どうか千秋楽まで大きな怪我なく自分の相撲を取りきってもらいたい。
アラフォーの恋愛事情
独身子供なしのアラフォーである私だか、実は少し前から恋人が出来た。
私自身、日々の生活でかなり精一杯になっていたため、恋愛は随分とご無沙汰だったのだが。
まさかアラフォーになって、また恋愛をすることになるとは思わなかった。
長年ひとりに慣れすぎていたけれど
私に恋人が出来たのは10年ちょっとぶりだったので、休日はひとりで過ごすことが当たり前だった。
それでもまあ、慣れてしまったら楽しくリフレッシュできていたのだけれど。
ここ最近は、ふたりで休みを合わせてどこかに出かけることが増えた。
とはいえ今まで私がひとりで行っていた公園やカラオケなんかを、ふたりで行くようになっただけではあるが。
ふとある日の食事中、「やっぱりひとりより、ふたりがいいね」と思わず恋人にポロッと言っていた自分に驚いた。
ひとりの時間が何よりも大切だった自分にも、こういう感覚があったのかと。
楽しいばかりではないけど、穏やかな日々
付き合っていると、楽しいこともあればそうでもないこともある。
こんな感覚になったのも久しぶりすぎて、少々戸惑ってはいるが。
それでも、優しく穏やかな恋人のおかげで、心やすらぐ日々を送らせてもらっている。
若者同士のカップルのように燃えるような恋ではないけれど、これくらいがちょうどいい。
今後はどうなるかわからないけど
しかし、我々はLGBTの恋愛であるため、現時点で結婚はできない。
付き合っていること自体、まだ2人の秘密になっている。
今後はどうなっていくか分からないけれど、私はずっと一緒にいられたらいいなとは思う。
前途多難ではあるが。
年甲斐もなく惚気てしまいましたが、最後までお付き合い頂き、誠に申し訳なく感謝致します。
「手ぇ、あったけえ…」と言われた夏のおわり
私は独身アラフォー女。
子供もいないし、恋愛も随分と御無沙汰だったため、「人と手を繋ぐ」という行為自体を暫くしていなかった。
そんな私が先日、何年かぶりに人と手を繋いで歩いたのである。
暗い帰り道でのこと
あまり詳しく書くと身バレしそうなので、若干の脚色も加えてボンヤリと書こうと思う。
私は週2回ほどアルバイトをしているのだが、勤務している建物から自家用車を停めている駐車場までが少し遠い。
そして、夜遅くなると照明も薄暗くて歩きにくい。
ひとりで帰れないこともないのだが、誰か一緒に帰ってくれるととても心強いような道だ。
そんなある日のバイト帰り。
「一緒に帰るか。暗いし」
と、上司が声をかけてくれた。
私より少し年上の、とても頼れる上司である。
仕事もできるし気配りもきめ細かいため、日頃から尊敬している。
上司とはそれまでもたびたび一緒に帰ることもあったが、シフトがあまり被らないため、一緒に帰るのはかなり久しぶりだった。
他愛のない会話をしつつ、薄暗い帰り道を一緒に歩いた。
すると上司。
「手ぇ繋ぐか、暗いし、見えにくいだろ」
はい?
「嫌か?」
いえ、嫌ではないのですがなんというか…
「ほら、いいから」
と、手を差し出す上司。
ちょっとドギマギしつつも、その手を握り返す私。
そして言われたのである。
「手ぇ、あったけぇ…」
その夜は秋も近づいており、少々肌寒かったせいか。
私の手を握るや否や、上司はまるで寒空のもと温泉にでも浸かったかのようにホッコリとした声色で言った。
何となくその声色からは、人の温もりに触れるのは久しぶりのようにも感じ取れた。
ちなみに上司の手は、というとまるで氷のように冷たく、思わず私は反射的に
「手ぇ冷たっ!なんでこんなに冷たいんですか!」
と驚くように言ってしまった。
しかし、なぜか思ったのだ。
「冷たいけど、なんか握ってると安心する手だな…」
そして暫くまた他愛もない話をしながら5分ほど歩くと、街灯が増えてきて一人でも歩きやすい場所に来た。
ここまで来れば、あとはもう大丈夫なのだが。
なぜか私は手を離したくなかった。
そしてなぜか上司も、手を離す素振りを見せなかった。
そのため、駐車場までのさらに数分、手を繋ぐ必要も無いのになんとなくふたりとも手を繋いだまま帰った。
すると、あんなに冷たかった上司の手が、少しずつ温かくなってくるではないか。
これは。
私の手の温もりが伝わってそうさせているのだと思うと、上司に対して愛おしいようななんとも言えない気持ちになってきた。
不思議と心が穏やかになり落ち着いてきていたのは私だけではなかったのか、普段はせっかちな上司の口調もゆるやかに心地よさそうになっていたように感じた。
そのまま駐車場に着き、さり気に手を離したのは私のほうからだった。
上司の手から汲み取れる感情は恐らく
「もっと手ぇ繋いでいたいんだけど…」
だったが。
ますますなんとも言えない気持ちになった私は、
「お疲れ様でした」
と極めて事務的に挨拶をし、自分の車に乗り込んで帰路に着いた。
久々に人の温もりを感じた
あれからバイトに入っても上司とは一緒になっていないので、上司があの時のことをどう思っているのかは分からない。
そしてどういう気持ちで手を繋いでくれたのかも分からない。
わたしの方はと言うと、
「久々に人と手を繋いで、温かかったな…妙に安心したし…」
と、けっこういい思い出として、胸の奥でほこほことしたものを持ち続けている。
手を繋ぐとオキシトシンという脳内の快楽物質が出るらしいが、そのせいかもしれない。
やっぱり、人は人と触れ合うことでしか得ることが出来ないものがあるのだと、数年ぶりに人と手を繋いで感じた夜だった。
ちなみに、上司は男勝りな女性である。
結婚しているのかどうなのか、恋愛対象は男性なのか女性なのか、すべてがミステリアスに包まれた、とても素敵な人だ。
女性に恋をした女の話(最終話)
アラサー女がアラサー女性のA子に恋をした話。
最終話です。
前回まではこちら↓
女性に恋をした女の話(第四話) - 吾輩のブログ。名前はまだ無い。
A子とはショッピングモールの駐車場で別れたのが最後
公園からショッピングモールの駐車場まで、私の車で戻った。
帰りの社内でもほとんど会話はなく、ショッピングモールに着くまでが妙に長く感じられた。
ショッピングモールの駐車場に着くとA子は「じゃあね、ありがとう」とだけ言い、自分の車へと戻っていった。
そのまま、私のほうを振り返る素振りもなく、さっさと車を発進させて駐車場を出ていった。
A子と直接会ったのは、それが最後だった。
ひとつの恋が終わったというのに、私はひとり残された車の中で泣くわけでもなく、ただ茫然としていた。
なぜ泣かなかったのか。
というか泣けなかった。
現実から目を背け、自分の恋心に蓋をし続けようとしていた私に対し、A子が真剣に私に向き合ってくれていたことが情けなくて仕方なかった。
自分の不甲斐なさを受け入れることができず、茫然とすることしかできなかった。
A子はこの日、私の好みに合わせた服装を身に纏い、未来が見えない私との恋に終止符を打つつもりでいた。
そこまでの思いが私にあっただろうか。
あわよくば疎遠になり、それきりになればいいと思っていた私に、泣く資格などないではないか。
女同士の恋だから、ではなく、私自身の未熟さがダメにした恋なのではないか。
こんなにも自分に嫌気が差したことはない。
気がつけばA子の車はおろか、駐車場にびっしりと停まっていたはずの周りの車も少なくなっていた。
ため息しか出てこなかったが、帰路につくことにした。
数年後にA子から連絡が
それから数年後、A子から突然LINEが来た。
「結婚することになった」
職場で知り合った少し年上の男性と結婚し、県外で暮らすことになったとのこと。
一方、私はというと。
恋愛などどうでもよくなっていた。
新たな趣味を見つけたこともあるが、自分には恋愛など向いていないことがよく分かった。
一人で生きていこう、そう決めていた矢先にA子から連絡をもらった。
そうなんだ。
おめでとう。
とあまりにも素っ気ない返事をLINEで返した。
もう、それきりにしようかと思った。
しかし、それだけだとあまりにも失礼だ。
それに自分の気持ちに蓋をして、逃げていたあの頃と何も変わらないのではないか。
思い切ってA子に電話をかけてみた。
A子の声はとても清々しいものだった
A子はすぐに電話に出てくれた。
「久しぶり、元気?」
その声は明るいと言う訳でも無く、暗いという訳でもなく。
強いて言うならとても清々しい声だった。
その声を聞いて、妙に安心したのを覚えている。
そして続けた。
「結婚おめでとう。突然電話してごめんね。どうしてもこれだけは直接伝えたくて」
するとA子は
「ありがとう。貴女、ほんとに変わってないね」
表情は電話越しで見えないけれど、微笑んでいるのが分かった。
変わってない、というのはどういう意味なのか。
うじうじしていてLINEの素っ気ないメッセージだけで済まそうとしていたのを、とっくに見透かされていたのか。
A子は、結婚相手のこと、どこで出会ったのか、どんな人柄なのかなどを淡々と説明してくれた。
そして来月にはもう県外に引越し、一緒に暮らすのだと言う。
私は考えるより先に口に出していた。
「あのさ、結婚のお祝いを送りたいんだけど…」
「だから、住所を…」
と言うやいなや、
「いいから」
A子がピシャリと叩きつけるかのように言った。
「…え?」
「もう、いいから。終わったんだから」
あまりに冷酷な言い方だった。
「…でも、お祝いだけでも…」
「しつこいな!いらないから」
怒鳴るように吐き捨て、一呼吸おいてA子は言った。
「もう会わない方がいいって言ったでしょ?電話ももうこれで最後だから」
お祝いの言葉を伝えようとしただけなのに、そんな言い方はあまりにひどくないか。
けれども、
「…うん。わかった」
私は項垂れてそう言うしかなかった。
A子は少し落ち着いた声色に戻り、
「じゃあね。元気で」
とだけのあっさりとした別れの言葉を告げた。
私は
「うん。お幸せに」
とだけ伝え、電話を切った。
涙がとめどなく溢れた
電話を切って数分、私はただ呆然としていた。
なんだったんだ。
なぜあんなにA子は冷たい態度を取ったのだろうか。
結婚のお祝いくらい、もらってくれたっていいじゃないか。
そもそも、お祝いを受け取る気がないのなら結婚の報告すらしてくれなくてよかったのに。
怒りとも失望とも言えない気持ちが湧き上がってきて、気づいたら私は泣いていた。
涙がとめどなく溢れ、止まらなかった。
悔し涙なのか、A子突き放されたことによるショックの涙なのか、はたまた数年越しにやっと泣けた失恋の涙なのか。
分からないが涙は溢れ続けた。
嗚咽も止まらず、涙なのか鼻水なのか分からないほどに顔がぐしゃぐしゃだった。
あんなに泣いたのは人生で初めてだったかもしれない。
数時間泣いて泣いて疲れ果てて、崩れ落ちるようにベッドへ倒れ込んだ。
その後、私がどうやって精神を立て直したのか、あまり記憶にない。
A子のLINEアイコンが子供の写真に
あれからさらに数年たった現在。
アラサーだった私は、アラフォーになっていた。
A子とはいっさい連絡をとっていなかったのだが、LINEの友だちには残していた。
そして先日、ふとA子のプロフィール画像が更新されていたことに気づいた。
ショッピングモールで最後に会った時からずっと変わっていなかったそれは、ふたりの幼い子供の写真に変わっていた。
その写真を見て、私は心底ほっとした。
よかった。
「子供が欲しい」
と言っていたA子の願いは叶えられたのだと。
そう思えば、あのときA子への恋心を抑え込んだ私の気持ちも、無駄ではなかったのかもしれない、とも思えた。
とはいえ、私がA子にしたことなど何もない。
気持ちに蓋をして疎遠になろうとしたことは、今も悔いが残っている。
結婚し子供をもうけたというのは、どれもこれもA子が自分の気持ちに素直に向き合い、悩んで決断し、進んでいった結果なのだから。
A子とのことで学んだことは、自分の情けなさや不甲斐なさはもちろん、自分の気持ちに正直に生きることや、きちんと相手に想いを伝えることの大切さなど、計り知れない。
「もしも、性別が違ったら」 などと「もしも」なんて考えてしまう人間は、結局のところ男女の恋愛という土俵でも上手くやれなかったはずである。
もしも私が男だったのならA子と付き合えたのか?
今でもたまに考えるが、恐らく答えはNOであろう。
むしろ、私が女だったからこそA子と親密な関係を築けたのだと思う。
私が「もしも」男だったのなら。
自分の気持ちも伝えられずウジウジしていて気持ちの悪い人間で、A子の眼中にもなかっただろう。
そう思う。
おわりに
アラサー女の私がアラサー女性に恋をした話。
取り留めのない話を読んでいただき、ありがとうございました。
同性への恋心というセンシティブな内容を、ブログ記事にするのは少し躊躇しました。
しかし「ああ、こういう恋もあるのか」くらいの軽い気持ちで読んでいただけたのなら幸いです。
私自身、性的少数者であると自覚はしています。
が、勉強不足なのと未だにLGBTQのいずれなのか、よく分かっていません。
おそらく、LかBに該当するとは思いますが…
きっと、私のように同性に恋をした方も意外と多いはず。
誰かに恋をするのは性別など関係なく素敵な恋心であり、おかしなことでもなんでもないのだと、最後にお伝えしたいです。
ありがとうございました。
女性に恋をした女の話(第四話)
アラサー女がアラサー女性のA子に恋をした話。
第四話を始めます。
A子に突然告白めいたことを言われ、困惑した私はA子を連れてショッピングモールの近所にある公園までドライブすることに。
自己嫌悪に陥る年上のアラサー
公園まで車を走らせ、駐車場に車を停めたものの。
どうすればいいのか分からない。
どうしよう、何を話せばいいのだろう、さっきのA子の言葉はどういう意味だったのだろう…。
などとドギマギしていると、突然助手席のA子が「くすっ」と吹き出した。
「ねえ、貴女からドライブに誘ったんでしょ?何か話そうよ笑」
いやいやいや、話そうと言われても、何を話せばいいのか…。
と、相変わらずドギマギしている私の心情を察してか、A子が話し出した。
「まあ、でもさっきの私の話し方は気になるよね。うん」
ズバリ核心に触れてきた。
そして続ける。
「私ね、貴女のことが恋愛対象として好きなんだと思うの」
「…え」
あまりにストレートな物言いに、私は拍子抜けするよりほかなかった。
「貴女と会えない間に、何をやってても手につかなくて。いま何やってるのかな、とか。一緒にここ行きたいな、でも勉強頑張ってるのかな、邪魔しちゃ悪いかな、なんていつも思っちゃってさ。ああ、私って貴女のこと本当に好きなんだなって思ったの」
さらにA子は、好きな人がいてそれが女性だということを自身の母親にも打ち明けたという。
「そしたらお母さん、大反対でさ。結婚もできないし子供も産めないのに、どうするの。養子?そんな子愛せるの?なんて言われちゃって」
私は何も言えなかった。
そして次の言葉で打ちひしがれた。
「何よりね、私、貴女が”そういう人”だと世間から見られるのが耐えられない」
”そういう人”という言葉を聞いた瞬間、ああ、これはもう無理な恋なんだと悟った。
A子のお母さんが大反対ということもあるが、A子自身も同性の私に恋をしていることに嫌悪感を抱いていたのかもしれない。
”そういう人”というニュアンスには、A子の様々な思いを感じさせた。
もう、A子と私にこれ以上の未来はない。
しかし、A子がこんなに真剣に思っていてくれたこと、そして自分の母親にも好きな人がいるが同性だということを打ち明けてくれていたこと、まったく知らなかった。
年上の私は、A子への恋心をただひた隠しにしようとしていただけなのに。
自分の気持ちに真摯に向き合ってくれていたA子に対し、私は逃げていただけだった。
こんなにも自分のことを情けなく思ったことはない。
私は何も言えないまま、公園から見える夕暮れ時の街並みをただ見つめているだけだった。
A子のあの眼差しは今も脳裏に焼き付いている
微妙な沈黙が続いた。
どうしようもなく情けない私は、どんな言葉を紡げばいいのかわからないままだった。
またも沈黙を破ったのはA子だった。
「でもね…」
その言葉は、涙声だった。
思わず私は助手席のA子をハッと見つめた。
「大好きなの…」
A子は涙をいっぱいに溜めた目で、まっすぐ私を見て言った。
「…私も…」
情けない年上アラサーの私は、こう伝えるのがやっとだった。
しかし、心の内側からはA子を抱きしめたい、キスしたいという欲望が溢れ出てきて止まらなかった。
自分の右手をA子の頬に差し出したその瞬間、A子の左手にやんわりと阻止された。
「…ごめんね…」
俯いたA子は私の右手を軽く握りながら言った。
「もう、会わないほうがいいね…」
「子どもが欲しい」と言われたら
A子は声を震わせながら続けた。
「私、自分の子どもを産むのが夢なんだ」
そりゃそうだよな、と妙に冷静な気持ちでその声を聞いている自分がいた。
「…だから…」
それ以上、A子も私も何も言わなかった。
私も、A子ももう30歳が見えている。
A子の「子どもが欲しい」という、女性としては至極当たり前な夢を、女の私がこれ以上邪魔する訳にはいかない。
「そろそろ行こうか」
私はそう言うのがやっとだった。
公園からA子の車が置いてある、ショッピングモールへと車を走らせた。
(最終話へつづく)
女性に恋をした女の話(第三話)
アラサー女がアラサー女性のA子に恋をした話。
第三話になります。
久々に会ったA子は服装も雰囲気もガラッと変わり、モヤモヤとした気持ちを抱えつつもショッピングモールでの買い物を楽しみ、休憩にカフェに入ることに。
なぜ女の子らしい服装を?
カフェでA子とふたり、他愛ない会話をしてまったりと過ごすも、心はどこか落ち着かない。
思い切ってA子に聞いてみた。
「ねえ、今日女の子らしくてすごくかわいいね。雰囲気もいつもと違うし、どうしちゃったの?なんかあった?笑」
つとめて明るく冗談交じりに聞いてみたものの、A子からの回答を待つ間ドキドキが止まらなかった。
彼氏が出来たと打ち明けられたらどうしよう…。
すると、A子はモジモジしつつ口を開いた。
「…えっと、だってふたりで会うの久しぶりだし。前に貴女が女の子らしい服装が好きみたいなこと言ってたから…」
ん?それってどういう…。
疑問に思い、ズバリ聞いてみた。
「彼氏が出来たわけではないの?」
「何言ってんの。出来るわけないでしょ。今日だって久々に会えるからって、貴女好みの服装にしてきたのにさ。そういうこと聞くんだ」
A子は少しムッとしながらも、続けた。
「…あのさ。ここしばらく会えないときもずっと貴女のことを考えてて…。何してるのかなとか、勉強頑張ってるのかな、とか。会いたくて仕方なかったの。ごめんね。こんなこと言って。気持ち悪いよね…」
A子も同じ気持ちだった?
週末のショッピングモールは人通りも多く、ガヤガヤと落ち着かなかった。
私たちが入ったモールのカフェも、家族連れやカップルや友達同士の会話で溢れかえっていた。
A子から突然告白(?)をされた私の脳みそは、パニックを起こし、さらにそれを助長させるかのようなカフェの喧騒によって思考がままならなくなっていた。
A子はいったい何を言っているんだ。
それって私のことが好きってことなのか?
会えないとき、A子も私と同じ気持ちだったってこと?
「気持ち悪いよね…」って。
つまりそういうことなのか?
ふと、カフェ内の喧騒がひときわ大きくなっていたのに気づいた。
午後3時過ぎ、モール内のお客も買い物に疲れてきて休憩場所を求める時間帯だ。
店に入れず、順番待ちをしている人も店外の椅子に5~6名座っているのが見える。
はからずも話を切り上げるきっかけが出来たため
「混んできたから、出ようか」
とA子に言い、ふたりでカフェをあとにした。
ドライブへ行くことに
そのあとは気まずい無言が続いた。
どの店を見るではなく、ウロウロとモール内を歩き回るA子と私。
いたたまれなくなり、A子に提案をした。
「ねえ、時間が大丈夫ならさ。ドライブでもいかない?」
A子も助け舟を求めていたのだろうか、
「うん、行こう」
と間髪をいれずに返事が。
2人とも自分の車で来ていたので、ひとまずA子の車はモールの駐車場に置かせてもらい、私の車でドライブへ行くことにした。
ドライブと言っても、もちろん当てなど決まってはいない。
近くに見晴らしの良い公園があるのを思い出し、とりあえずそこに行こうかと車を走らせた。
向かう道中も会話はほとんど弾まない。
疲れたねー。とか、色々見れてよかったねー。
などという他愛もない話をして、公園までの約10分間を運転した。
その間、2人とも心の奥にある核心には触れないようにしていた。
(第四話へつづく)
女性に恋をした女の話(第二話)
同性に恋をした女の話、第二話。
社会人になって出会った、A子についての話の続きをしよう。
気づけばA子のことばかり考えるように
A子と会う頻度が増えるにつれ、私はA子のことばかりを考えるようになっていた。
これA子が好きそうなお菓子だな。
今度一緒に食べようかな。
ここ、A子と一緒に行きたいな。
それは、しばらく封印していた「恋心」そのものだった。
また人を好きになってしまった。
しかも女の子。
付き合ったとて、先が見えない。
女性の幸せは結婚や出産が全てでは無いとはいえ、これ以上好きになっても、仮に付き合ったとしても、相手も自分も苦しいだけの気がする。
気づくと涙が止まらなかった。
しかし、感傷に浸っているのは私だけで、A子にとっての私はただの友達に過ぎないはず。
次第にA子との友達関係について、悩むようになっていた。
A子と距離を置くように
悩んだ末、私はA子と会う頻度を減らすようにした。
会いたくないわけではない。
もちろん会いたいのだが、会うたびに苦しくなるのは分かっていた。
仕事が忙しいだの、資格試験の勉強をしなくてはならないだの、色んな言い訳をして極力会うのを避けていた。
幸いと言っていいのか分からないが、A子の方も仕事で県外出張に行くようになり、自然とふたりで会う機会は減っていった。
しかし、会っていないときも考えるのはA子のことばかり。
いずれにしても、つらい。
取得しようとしていた国家資格の勉強にも身が入らず、その年の試験は落とした。
A子と久々に会ったときのこと
それでも仲が悪くなった訳では無い。
会えない時もお互いメールのやり取りはしていた。
「私の試験が終わったら会おう」
と約束していたので、約2ヶ月ぶりにA子と会った。
とあるショッピングモールでいつものように遊ぶ約束をしていたのだが、A子にしては珍しく遅刻をした。
何かあったのかと心配をしていたのだが、現れたA子を見て驚いた。
いつもA子はボーイッシュでカジュアルめな服装なのだが、その日のA子は珍しくスカートを履き、髪の毛も巻き髪にしていた。
こんなに女の子らしいA子を見るのは初めてだったので面食らっていると、
「ごめんね、待たせて。普段こういう格好しないから慣れてなくて…どうかな?似合う?」
と、顔を赤らめながら聞いてきた。
うん、すごく似合うよ。かわいい。
と答えたものの、正直なところ似合う、似合わないはどうでもよかった。
どうしたんだ、そんな格好をして。
しばらく会っていなかったから、服装の趣味が変わったのだろうか。
それとも、彼氏でもできたのだろうか…。
心の中はモヤモヤでいっぱいだった。
モヤモヤしつつも買い物を楽しみ、歩き回って疲れたのでお茶でもしようかとモール内にあるカフェで休憩することにした。
(第三話につづく)